結論: AI 時代の最短経路は、実際に作りながら AI の境界線で学ぶこと。
ゴール
- 想定読者: SEO やデジタル施策に関わるが、自分ではサイトを作れないと思っているマーケター
- 読後に得てほしいこと: 開発未経験でも AI を使えば「高速実践 → 進化の観測 → 境界線の更新」という学習サイクルを回せるという実感
- 前提知識: STUDIO などノーコードの利用経験があること。コードは読めなくても大丈夫です。
導入
SEO を本気で理解しようとすると、キーワードや記事制作だけでは足りません。Meta ディスクリプション、サイト構造、画像最適化、表示速度、独自ドメイン、DNS、GTM、Search Console……普段はエンジニアに任せているレイヤーの理解が欠かせません。
そこで「開発未経験のマーケターが AI を相棒にすれば 1 日でサイト公開まで行けるのか?」を検証。Codex(AI コーディング支援)と Next.js を組み合わせ、Vercel へのデプロイから Search Console / GA4 の設定まで走り切りました。この体験を単なる作業記録で終わらせず、AI 時代に学びを最大化する 3 つの戦略として整理します。
背景
私の主戦場は要件定義やコピー制作で、実装は外部パートナーにお願いしてきました。けれど SEO の成果責任を持つには、裏側の仕組みを自分の手で確かめる経験が必要だと痛感。
Next.js + Tailwind(Codex の提案)+ Vercel という構成で極小スコープのサイトを構築し、Xserver で取得した独自ドメインを Vercel に向け、Search Console / GA4 の設定まで 1 日で完了させることをゴールに設定しました。
戦略1: 情報収集より 1 日集中の高速実践
AI が実装ハードルを下げた今、机上のインプットよりも 1 日集中のハンズオンのほうが情報量も理解度も桁違いに高まります。実際に回した工程は以下のとおりです。
- Xserver で独自ドメインを取得し、DNS を Vercel に向ける
- Vercel 側で CNAME を登録し、デプロイと SSL 設定を自動化
- Google Search Console に所有権を登録し、インデックス状況を確認
- GTM(Google Tag Manager)と GA4(Google Analytics 4)でイベント計測の土台を整備
コーディングの細部は Codex に任せ、私は「どの操作が Google やユーザーにどう影響するか」という因果関係の把握に集中できました。DNS 伝播に 30 分ほどかかる感覚や、OGP が即時更新されない理由など、手を動かさないと得られない時間感覚も獲得。
一度フローを経験すると、外部パートナーへ依頼する際に「ここまでは自分で段取りします」「ここから先は専門家に」と境界線を引けるため、コミュニケーションコストが一気に下がりました。
戦略2: エンジニアリング領域で AI の進化を観測する
文章や講演だけではチャット型 AI の進化を捉えづらいですが、Next.js 開発で Codex を相棒にすると肌感が変わります。ヒーローコピーや CTA、SEO 要件を伝えるだけで、Next.js のコンポーネントと Tailwind のスタイルがまとまった形で返ってきました。npm run dev を走らせながらタイトルや構造化データを調整し、10 分単位で UI を更新するループが成立します。
役割分担を明確にすると、AI の進化と限界が同時に見えてきます。
- AI に任せたこと: コンポーネント生成、スタイル調整、画像最適化のサンプル、GTM/GA4 用コードスニペット
- 自分で判断したこと: 追うべき KPI、優先するタグやイベント、ページ構成や CTA の意図
仕様書を読み終える前にまずプロトタイプを触り、疑問をピンポイントで解消する進め方が可能になりました。マーケ業務だけに閉じていると見えない景色なので、意図的にコード側に身を置くことが、AI の恩恵を最も濃く受け取る近道だと実感しています。
戦略3: AI が詰まった地点を次の学習テーマにする
今回のハンズオンで「AI に任せきれない領域」もくっきり浮かび上がりました。背景を共有せずに「SEO を強くして」と頼んでも、狙いたいキーワードや競合構造がなければ抽象論しか戻りません。DNS やサーバー設定、外部サービス連携のように複数ツールを往復する作業は、前提を知らないと指示が出せず、結局自分で理解する必要があります。
現時点での境界線は次のとおりです。
- AI が得意: コード雛形の生成、既存パターンの最適化、設定手順の提示、忘れがちなベストプラクティスのリマインド
- 人間が握るべき: ビジネス背景の言語化、タグ設計の優先順位付け、DNS やサーバー選定といった横断的な判断、リスクを踏まえた最終意思決定
AI を「なんでも解決してくれる存在」と誤解すると、前提共有が甘くなり手戻りが増えます。むしろ AI に指示を出しながら境界線を意識的に探ることが、次に自分が学ぶべき領域を照らすコンパスになります。エンジニアリングの理解が深まるほど AI に委ねられる範囲が広がる——その事実自体が強いモチベーションになります。
学習サイクルの設計図
3 つの戦略は独立した tips ではなく、循環する学習モデルとして機能します。
- AI と高速に実践する
AI のサポートを受けながら実装まで一気にやり切り、非エンジニアでも短時間でフィードバックループを回す。 - 進化と限界を同時に観測する
実践の場で AI を酷使すると、得意領域の伸びと人間が担うべき領域が同時に見え、進化の温度感をリアルに把握できる。 - 境界線の外側を学習テーマにする
AI が詰まった地点を次の学習テーマに据え、ドメインやサーバー、ビジネス要件などの理解を拡張して AI のレバレッジを高める。
このサイクルは、単なるツール習熟ではなく「AI を使って自分の学習速度を増幅する方法」です。実践と内省を高速で往復できる人ほど、AI 時代のマーケ組織で価値を生み出せると感じました。
まとめ & 次のアクション
- AI と組んで高速に実践することで、ドメイン・サーバー・コードと Google 側の動きが一気につながり、ブラックボックスだった領域を説明できるようになった。
- Next.js × Codex のワークフローで仮説検証のループが 10 分単位になり、AI の進化を最前線で観測できた。
- AI に任せられない領域を特定し、そこを次の学習テーマに据えることで、AI 活用のレバレッジをさらに高められると分かった。
読者への次の一歩
- 独自ドメインを取得して Vercel などのホスティングに接続し、DNS や SSL の流れを体験する
- AI に指示を出す際は、狙うキーワードやターゲットを必ず言語化する
- プロトタイプを 1 日で作り切り、どこで AI が行き詰まったかをメモして次の学習テーマにする
私が次に挑戦すること
- サイトにログイン機能や AI チャットを追加し、外部 API を絡めた開発で境界線をさらに押し広げる
- 今回の学びをマーケティングコミュニティで共有し、他の非エンジニアが実装に踏み出すハードルを下げる
- GTM / GA4 の高度な計測設計を自分でリードできるよう、データ基盤の理解を深める
